墨田区では再開発等を背景に、年々人口が増加している反面、昔ながらの近所づきあいがなくなったという声もあげられています。特に、マンション居住者が地域とのつながりの薄さにより孤立しやすい状況になっている地域も多いようです。
そうした中、マンションに住む居住者同士でつながっていく、支えあっていくという姿勢が必要になってきており、また、震災を契機にそういった機運も高まっています。
管理組合での様子
江東橋四丁目にある「ハイタウン錦糸町」は昭和53年に建てられた分譲マンションです。
当時入居された方の高齢化が進み、ひとり暮らしや高齢者のみの世帯も増えています。持病などを抱え、ひとり暮らしに不安を感じられているかた、また実際に倒れてしまい、なんとか一命を取り留めたというかたもいらっしゃるそうです。
入居者の皆さんで構成される管理組合では、こうした課題が話し合われ、入居者同士で支えあえる関係をつくっていくことになりました。
当協議会やみどり高齢者みまもり相談室がこの活動を支援し、管理組合の理事長、理事を中心とした有志により少しずつ実際の活動を始めています。
「ハイタウン錦糸町」内で支えあい活動を始めるにあたり、住民の皆さんから「挨拶はするけれど名前は知らない住民がいる」「緊急時の連絡先がわからない」といった課題が出てきました。そこで、居住者名簿を作成することにしました。
入居者現状調査票
名簿を作成するために全戸に調査票を配ることにしました。調査票には氏名・同居者の有無・緊急連絡先等のほか、今不安に思っていること、マンション内での支えあい活動へ協力できるかなどを記入できる欄を設けました。多くの人に提出を呼びかけるため、マンション入り口の郵便受けではなく、居室の玄関ポストに協力者が一軒ずつ配りました。
個人情報なので管理室前にポストをおき回収しました。名簿作成は任意で行うものですので、居住者によっては回答しない方もいました。今回は小さな子どものいる若い世代からの回答や、なんらかの形で支えあい活動に協力したいという回答も多く、今後のマンション内でのつながりに期待が持てる結果となりました。
この名簿は現在、管理組合が保管しています。次回は名簿の情報と住民の持っている情報を支えあいマップに落とし込んでいく作業に取組みます。
「ハイタウン錦糸町」の皆さんは、任意で作成した居住者名簿の情報と住民の持っている情報を支えあいマップに落とし込んでいく作業に取り掛かりました。
支えあいマップのイメージ
地域の実情や、そこに住んでいる人の状況を住民自身が把握し、それを日常の支えあい活動や災害時の要援護者のサポート等に活用します。
住宅地図などを用いて作成することが多いのですが、今回は、マンションの管理会社の協力もあり、マンションの見取り図をお借りできました。
1人暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯、子どものいる世帯、また、家族と同居しているが日中は独居であるといった情報を部屋ごとに色分けしていきます。
また、「介護ヘルパーが訪問している」「通院している」といったマンション内で見聞きした情報を書き込んだほか、今回の調査の結果(訪問の希望や活動への協力)などを書き込みます。
支えあいマップづくりは協力者みんなで行い、それぞれ自分の知っている情報を話しながら、対象者の情報量を増やしていきました。住民によって情報量の多い人はマンションに知り合いが多いこと、情報量の少ない人はマンションに知り合いが少ないということもわかってきました。
いよいよ、マンション内の支えあい活動が始まります。
「ハイタウン錦糸町」の皆さんは、住民から回収した調査票と支えあいマップを照らし合わせながら、支援方法を話し合いました。
「安否確認を兼ねて定期的に訪問して欲しい」という人には、同じ階の協力者や仲のよい人が定期的に訪問することにしました。
また、調査票は出ていないけれど気になる住民や、訪問するほどではないが高齢で独居であるといった住民については、散歩や買い物に出る際に気にかける、エレベーターやホールで会った際には、近況を聞くといったことを行っていくことになりました。
社協からは、お宅を訪問する際には複数人で行く、お互い負担のないように訪問は15分くらいでといったアドバイスをしています。そのほかに、訪問する際には、高齢者みまもり相談室が毎月作成している「みまもりだより」などを持参し、話のきっかけにするなどのアイデアもでました。
集合住宅での支えあい活動の様子
活動を始めるにあたり、気になることがあった場合には、1人で悩まず、相談しながら活動していくこと、負担を感じない程度の活動をしていくことをみんなで再確認しました。
このような活動をする場合には、社会福祉協議会や高齢者みまもり相談室、地域の民生委員・児童委員さんと連携しながら活動していくことが大切です。住民同士で知り合い、孤立を防ぎましょう。
集合住宅は、防犯やプライバシー保護といった面で利点も多く利便性の高い住居である反面、ご近所付き合いしにくい面もあります。災害時だけでなく、日頃から何かあったときに相談できる人がご近所にいると心強いですね。そういった関係づくりは、すぐにできるものではありません。まずは、挨拶や立ち話から始めてみませんか。
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